指導員つれづれ

☆第31話「聞く力」☆


わらべ学童では、毎日必ず「帰りの会」があります。

お便りをはじめ配布物を手渡したり、連絡ノートを配ったりしますが、そのあと毎回、指導員からのメッセージがあります。

時々、時間超過でお叱りを受けることも多いのですが、どうしても伝えたいことを、子ども達にもわかりやすく、思いを込めて指導員が話す、とても大切にしている時間です。

新しい試みとして、今月の初めから輪番制で、毎日違う指導員が話すことにしました。

長い間、私がいる時は、1人で話すようにしてきましたが、少し「慣れ」が見られてくる中、子ども達には今以上に「聞く力」を、指導員には「話す力」を身につけていくことを目的に、小さな挑戦をしたのです。

はじめは難色を示した指導員もいましたが、珍しさも手伝って、子ども達の「期待」がつまった視線で見つめられると、頑張らないわけにはいきません。(笑)

初々しく、ちょっと緊張しながらも、それぞれの指導員が話をしていきます。

まだまだ日が浅い取り組みですが、今までにない「子ども達のうしろで聞いている」状況になった私は、いくつか気づかされたことがありました。

まず指導員が、他の指導員の話をとてもよく聞いている事。

「先日の話」が随所に感じられたり、作業中の場合も、耳はしっかり話し手に向けられていることがわかります。

「うんうん!見本(わらべでは基本的に手本はなく、あくまでも見本なのです)に、ちゃんとなってるやん♪」と、嬉しく思いました。

次に、聞き手の子ども達の成長が著しい事。

時には、話し手の未熟さから、話の中に出てくる言葉が「噛み砕いてない」場合もあるのですが、「聞く力」の中でも、「人が何を伝えようとしているかを汲み取ろうとする力」が、とすごく伸びてきたことを感じずにはおれません。

伝えきれない思いや、思い通りにいかない歯がゆさの中で、ついつい乱暴になってしまうことが多かった子に、少しずつ変化が見えはじめたのもそんな矢先でした。

その日も、帰りの会のメッセージの最中、隣の子をつつきまわしていて、いつ注意しに行こうかとイライラしていたのですが、終了後にポツリと「今日の話、この前さるせんが、俺に話してくれた話と似とった・・・」と言うではありませんか。

「周囲の子を大切にすることは、自分を大切にすることにもなるんやで」という主題の話を、別々の指導員が別々の視点で繰り返し話したので、「この前の話と似てるぞ・・・これはかなり大事な話みたいやな・・・」と、前回よりさらに胸に落ちた様子で、「あれはたぶん、ボクに話してくれてるんじゃないか・・・」と考えたようです。

さらに別の日には、TVでとりあげられていた行き過ぎたいたずらを取り上げて、「いたずらや悪ふざけは、相手がつらくなった時点でいじめと同じじゃないかな?」とみんなに語りかけると、その子は、目を潤ませながら聞いていました。

話をしっかり聞くことで、「我が身に置き換える」ことができるようになったようです。

「聞く力」のスタートが「聞いてあげる」事、つまり「聞いてもらう体験」なら、問題は「話し手」の技術や話し方ではなく、日常どれだけ「聞き手」に回るかなんだと思わされました。

子ども達は、たくさん「聞いてもらう」ことで、たくさん「聞いてあげられる」ようになるのです。

「うちの子、人の話が聞けなくて・・・」と、お悩みの皆さん。

まずは、「大人の側がよき聞き手になること」から始められてはいかがでしょうか?

忍耐と辛抱の末に、少し希望の光が見えるかもしれませんよ。

「聞く力」がついてきた子ども達の次なる目標は、「考える力」さらに「話し合う力」かな・・・と思う春です。 by さるせん

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