指導員つれづれ

★第84話「底力」★


秋の訪れを少しずつ感じる今日この頃、とてつもなく暑かった夏をふり返りながら、机に向かう時間を持てるようになりました。

そんな時、9/17付朝日新聞の記事に目が留まりました。
【・・・ある大学で、入学後1週間もしないうちに「友達ができない」と学生が相談に来た。「努力したがうまくいかない」という。相談を受けた方は、1週間努力すれば友達ができると思っていることに驚いた。せっかく入った大学を、友達がいないからと中退する学生が増えている。いくつかの大学では、「友達づくり」の手助けをはじめたそうだ。学生たちは、友達がいない寂しさより、いない恥ずかしさに耐えられないのだと言う。「暗い奴」と見られたくない。周囲の目が気になって学食でも一人で食べられない。あげくにトイレで食べるものもいると言うから驚かされる。携帯電話に何百人も「友達」を登録して、精神安定剤にする学生もいると聞く。・・・】という内容でした。

近年、小学生の放課後は、極端に短くなってしまった事をはじめ、習い事の急増や犯罪の増加を背景に、活動の幅も狭くなってしまいました。

忙しい小学生が増え、仲間と友情を紡ぐ時間も空間も減ってきているのです。

また、怒ったり落ち込んだりする事が「悪」であるかのように位置づけられ、感情の「怒・哀」が影を潜め、「喜・楽」を殊更に強調する様な、「妙に大人びた子ども」「大人化した子ども」の様子を目にするにつけ、何かしらざわつく心を鎮めることができません。

一般的には、もうすでに「放課後のない生活」が始まってしまったようです。
【放課後のない生活では「生きるための底力」は、身につきません。「生きるための底力」とは何か・・・それは、「食べっぷり」「遊びっぷり」「つきあいっぷり」の三つの「ぷり」が身につくことです】と、千葉大学の明石要一教授(教育社会学)は語っています。
疲れ果てるまで遊んで、ぺこぺこにおなかがすいて、たっぷり食べてしっかり眠り、心と体を休めて、子ども社会の中で、自分の都合や考えとも折り合いをつけながら、けんかと仲直りを繰り返し、仲間と付き合うこと・・・。そうして「生きるための底力」を身に付けた子どもたちは、大学生になっても、おそらくトイレで食事をすることはないと思うのです。
【スケジュールに管理され「明日を考える生活」が中心となっていることが、一見いいことのように思えるかもしれませんが、それは大人がすることで、少なくとも大学生くらいまでは「今に生きて」ほしい。いつも「明日」を考えていると、「今」の記憶が残っていないから、「あの頃は良かったな」という子ども時代の幸せな思い出のない大人になってしまいかねません。学校が「記録を残す文化」なら、放課後は「記憶を残す文化」なのです。学校でかけ算の九九をどうやって習ったかなんて記憶になくても、記録として身についている。子ども時代には記録の文化と記憶の文化、この両方が必要なのです。】と、明石教授は続けます。

正常に喜怒哀楽を表現すれば、けんかだって小競り合いだって起きて当たり前の事柄です。
イギリスの詩人テニスンは、“一人の敵も作らぬ人は、一人の友も作れない。”という言葉を残しました。

暴力は肯定できませんが、口論さえ成立しない、また、けんかしても仲直りのチャンスもない子が増えてきています。

放課後の生活を中心に成り立つ学童保育。
その大きな存在理由の1つである「友達作り」について、大人達がしっかりと考えるべき時が来たように思えてなりません。

by.Sarusen

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