鶴見わらべ学童保育所保護者会2012年度総会 特別決議「私たちのわらべ学童を守ろう!」
大阪市は4月5日、「市政改革プラン(案)」作成に向けて「施策事業の見直し」試案を発表し、その中で平成25年度より“学童保育事業(放課後児童留守家庭事業)補助金廃止”を打ち出しました。試案全体では、学童保育を含む443事業を対象に24年度から26年度の3ヵ年で548億円を削減するとし、市民生活に大きな影響を与える内容となっています。
大阪市内の学童保育は40年を越す歴史を積み重ね、豊かな子ども文化・子育て文化を醸成し、地域での子育てになくてはならない施設として、地域社会における役割を果たしつつあります。大阪市学童保育連絡協議会は今年3月に「大阪市の学童保育・7つの提言」を発表し、安心して子どもを生み育てられる地域、子どもが豊かに育つ地域づくりをめざし、学童保育固有の役割といっそうの充実を訴えてきました。しかし、大阪市の見直し試案では、学童保育への補助金が廃止され、ほとんどの学童保育が運営の危機にさらされます。試案では、学校における全児童対策と学童保育を一体化した案が示されていますが、全児童対策事業と学童保育は全く趣旨の違う事業です。何よりも放課後施策については2事業で推進することを基本的な考え方としてきた大阪市の見解とも矛盾するものです。
補助金廃止の対象とされた学童保育ですが、保護者の事業運営や活動への参画、活動と指導内容の充実、地域との連携など、他の事業と比べても学童保育の様々な取り組みが積極的に展開されていることは、大阪市が実施した保護者アンケートでも明らかです。
試案では4指定都市の水準並みを基本に標準モデルを設定するとして、名古屋市と横浜市の施策が紹介されています。しかし試案が参考とした名古屋市や横浜市では、参考施策とともに学童保育への独自な施策も平行してすすめています。
大阪市の子どものあそびと生活を守り、働く保護者の就労保障、そして子どもが豊かに育ちあう地域社会の大切な施設として学童保育が果たしてきた役割はこれまでも、そしてこれからもますます大きくなっています。引き続き子どもたちにとって住みよい大阪市をめざしていくためにも試案が示した学童保育への補助金廃止の撤回を求めます。(大阪市学童保育連絡協議会「緊急声明」より)
鶴見わらべ学童保育所は1986年の創設以来、「子どもたちに豊かな放課後を」と願う多くの保護者たちの願いを反映しながら、任意団体として運営を続けて参りました。
今後は運営の主体を委譲し、2012年度中にNPO法人の設立を進めることを決議した矢先、上記のように、大変危機的な状況を迎えました。
私たちわらべ学童の指導員は、これまで運営に携わって頂いた保護者の皆さんのお子さんに対する思いや願いを教科書にしながら、わらべ学童で指導にあたって参りました。指導員の雇用を安定的に維持するために、様々な努力と負担を強いられながら、それでもなお、「子ども達に豊かな放課後を過ごさせたい!」と、力強くわらべ学童を支えてきて下さった皆様に対して、最大の敬意を表すると共に、今一度力を集約していただき、「学童保育を守る最後の戦い」への賛同を強く呼びかけます。
今まで、「もし、わらべ学童がなくなってしまったら・・・」と考えたことは、正直一度しかありません。6年前、施設の移転を余儀なくされた時、初めて「なくなるかもしれない」と思い、恐ろしさに震えました。
「学童保育指導員」という仕事は、世の中から見ればまだまだマイナーであり、その身分保障についても、施設間のばらつきや地域格差が大きいのが現状です。保育内容についても、鶴見区を例にとっても施設任せであり、「最低限必要な内容」を定めたガイドラインさえなく、施設や指導員個人の「良識」に依拠して保育しているのが現実です。
そんな中で「わらべ学童」は、市内的に見てもまた府下や全国的に見ても、保護者と指導員の意見交換を基に健全な保育を行い、OBOGともしっかりとしたつながりを持つ希有な施設であり、多くの関係者に影響を与え続けてきました。
そのわらべ学童が、いよいよ生死をかけた戦いを迫られています。
大阪市の施策はこれまで、40年に渡る歴史の中で1度として「学童保育」に陽の光を当てたことはありません。そのことは、全国的に見ても政令都市中、万年最下位である学童保育予算で充分明らかです。わらべ学童は、子どもたちや保護者の皆さんの「必要だから」というニーズに支えられて、今日まで続いてきています。
私たち指導員にとってこの「仕事」は、単なる「職業」ではなく、「ライフワーク」として子ども達に関わり、「仕事」の範囲外でも多くの卒所生と関わり、その人生の歩みに寄り添ってきた自負を持っています。
橋下市長の政治的な判断については賛否が分かれる所かと思いますが、「子どもたち」「保護者」「OB・OG」「指導員」にとって「わらべ学童が必要だ」と、今声を上げなければ、試案に沿って準備が進み、学童保育の運営ができなくなることは、明白な事実です。
今、わらべ学童を守る手段はあまりにも少なく、不安で押しつぶされそうな日々が続いています。だからこそ、「やれることはすべてやる」覚悟を決めました。
「これまでのわらべ学童の子」と「現在のわらべ学童の子」、そして「これからのわらべ学童の子」のための覚悟です。
皆さんの力で、「学童保育補助金廃止」をはねのけ、来春からもずっと、卒所生達を心を込めて送り出し、将来に渡ってその拠り所となり、新1年生を温かく迎えるという血の通った「わらべ学童」の営みを、どうか続けさせて下さい。
2012年4月15日 鶴見わらべ学童保育所指導員 猿渡 太